時を刻む音、今。

嵐の音が流れ影絵の雷が光輝く。
そして、「待望」の小沢健二の登場し、ひふみよサイトに発表された「街に血が流れるとき」を朗読する。
「投資界に、「町に血が流れる時は買い時」という格言がある。ロッカフェラーが言ったとか、ロスチャイルドが言ったとか。よく「戦後の闇市で一財を築いた」などという表現も聞く。町に血が流れる、大混乱の時には、普段できないようなお金儲けができる、ということらしい。それは、僕らの今の社会の性質らしい。
 町に血が流れる時、多くの僕らは泣き、立ちすくみ、走り出し、座り込み、呆然とする。 心配で眠れなくなる。疲れる。誰に向けたらいいのか、怒りがこみ上げる。気持ちが混乱する。後悔する。未来がわからなくなる。居座ろうと腹をくくる。でも、怖い。
それは多くの僕らの、善意がこんがらがった気持ちだ。けれど、町は善意だけではできていない。 善意に見えるものの裏に、何かがあることがある。善意とは関係ない、何かが。では、目にする善意を疑ってかかるのか? そんなことはできない。あふれる善意は圧倒的に輝き、それは僕ら自身だ。でも、その光の中で、巧みに動き回る影もある。強い光の中で、影も強くなる。(ひふみよサイトより抜粋)」
そのあとに、未発表の後書きを読みだす。
「9.11の時、僕はニューヨークのマンハッタンに住んでいた。朝っぱらから鳴り続ける電話で起こされると、タワーが燃えていた。窓からから次々と人が飛び降り、やがてタワーが崩れていった。ニューヨークの市長が、テレビで「テロリストに対抗する手段は経済をストップさせないこと。買い物をしてください。」と話している。僕はそれを聞いて、「経済をスットプさせない事が、テロリストに対抗する手段?」って思った。そのコメントを受けてか、市街地にある高級店は開店していた。そんなニューヨークに居続けた僕としては、なにか文章を書かずにいられなかった。大事なことの多くは既にいろいろなところで書かれたり、言われていたのはわかっていたけど、「これを言わないと」という出しゃばりな危機感から、僕はこの文章を書かずにいられなかった。
そして、この文章と一緒に無数に積まれている石の写真を1枚添えてサイトにアップした。
無数に積まれている石達は、誰がいつ積んだのかわからない。色々な時代の多くの人たちが、祈りを込めて積んだのだろう。僕が付け足すことはなにもないかもしれないけど、どうしても一つ、祈りを込めた石を積んでおきたかった。」

次に「メトロノーム」を朗読する。

ガリレオ・ガリレイは、振り子は時を均等な間隔で分割する事に気づき、そこから振り子時計という発想が産まれた。時計の秒針は、1分間に60回音を刻む。それを音楽ではテンポ60という。その秒針の音の間隔を調節できるようにしたのがメトロノーム。テンポ60だけでなく、はやくしたり、遅くしたり変えることが出来る機械。振り子は、地球の自転の影響を受け、同じ振り子でも地上のどこにあるかで違う振れ方をする。ヨーロッパで産まれたメトロノームは、東京でどんな振れ方をするのだろう?」

そう語り終わった後、脇のテーブルに置いてあるメトロームを鳴らしだす。
カチッカチッと時を刻む音に合わせて、ギターを鳴らしだし、新曲「東京の街が奏でる」が演奏される。
『周波数の隙間から聞こえる音に耳を澄まし 東京の街が奏でる』

オザケンがギターを弾きながら、メンバーを一人ずつ紹介する。すると、呼ばれたメンバーが次々とステージ上に現れて演奏に加わっていく。音がどんどん厚みを帯びていくと、「さよならなんか云えないよ」が演奏される。
『本当はわかっている 二度とは戻らない日にいると』
過ぎていく時間に対するもどかしさを歌ったこの曲を聴くと、僕はいつでもドキドキしてしまう。次に、テンポを変えてメトロノームを鳴らし始め、ギターのアルペジオとストリングスが絡み合い「戦場のボーイズライフ」へ。「オッケーよ」と両腕で丸を作りながら、この歌を口ずさみ、「本当に原宿あたりをダッフルコート着て歩いたなぁ…」なんて事を思い出す。
次の曲はテンポ60で「いちょう並木のセレナーデ」
影絵の合図に合わせて「男の子、女の子パート」と会場中で歌い合う。
『長い時間を僕らは過ごして 夜中に甘いキスをして(フゥー)』
こうやって女性と男性で交互に歌い合うと、この曲の雰囲気がより浮き立つ感じがした。
「次の曲も歌えるところは、全部歌ってください。」の言葉の後、ギターのアルペジオが流れ出したと思ったら、バックコーラスの真城めぐみがメトロームのテンポを間違えてやり直し。
今夜はブギーバック今夜はブギーバック(大きな心)」
ひふみよライブと同様に、ラップ部分は会場が歌うのかなと思っていたら、小沢健二がそのまま歌いだす。会場が笑いに包まれながら、自然と一緒に会場全体で歌いだす。肝心の2番のRAP部分はどうするかと期待していたら、そのまま小沢健二が「俺、スチャアニ」って歌うのには笑った。大歓声とともに会場が沸く。
曲が終わると「座ってくださいサイン」が表示され、皆が座り出す。