言葉にするとまるでちがったものになってしまう

■言葉にするとまるでちがったものになってしまう
人間の話す言葉は基本的に足らずなもの。
感じたことをそのまま言葉にするなんて基本的に出来ない。
いま食べたものの美味しさを伝えるために「やわらかい肉を噛んだ瞬間ジュワッと肉汁が出て、塩と胡椒だけのシンプルな味付けだからこそ肉のうまみが引き出されている」なんて詳細に表現しても結局相手に味なんて伝わらない。
「やわらかい」って言葉をどんなに表現してもその言葉に対する感じ方って一人ひとり違ってしまう。
美しい景色を「美しい」と言葉で伝えたって、僕の伝えたい美しさは伝わらない。
脳のシナプスを流れる電流を言葉にするときに変換損失が発生してしまう。
伝えたいことの大部分はポロポロと零れ落ちてしまう。


言葉は相手に想像させる余地を残している。
相手が伝えた言葉を僕たちは自分本位で無意識に曲解してしまう。
「美しい」という一つの言葉だって、話す人によって全然違うものになってしまうんだ。
相手に対するイメージや話し方などで、自分勝手に想像して作り上げてしまうんだ。
だから相手によってコミュニケーションが面白くなったりつまらないものになったりする。
「芸術って難しい」という言葉を、名のある芸術家と一般の人が話すのでは言葉の深みが全然違って感じる。
けど、それは言葉を受け取る人が勝手に深いなぁって感じてるだけで、芸術家がそういうつもりで言っているかどうかは本人じゃないから誰にもわからないんだ。
これがコミュニケーションの本質。
だからこそ結局分かり合えないって事はわかっているけど、僕たちは他人と共感できたと感じることが嬉しくて求めてしまうんだ。


今回の一曲
Four Tet - Angel Echoes