自分があることにより他人がいて世界がある

名古屋市美術館で美術講座を聴いてきた。最近考えていたことのヒントをもらったみたいで面白かった。ということで思いついた3つのこと。
1.人間は思い通りに出来ることなんて何も無い。どんなに技術があるアーティストも頭の中のイメージを完璧に具現化できない。
思い通りに近い部分とそうでない部分が入り乱れて一つの作品となる。俯瞰的な視点を持ってみるとその作品には思いがけない効果があり、最初のイメージプランには無かったにもかかわらず、自分が表現したかったことができたと感じてしまう。
また全てのものは分割すると一つ一つの要素が現れる。一つのものを作り上げるための完全なレシピは無く、人は最終的なイメージを想定しながら一つ一つの要素を組み合わせていく。しかし工程を少しずつ間違えることによりイメージと似たようなものが生まれる。また同じものを表現しようとしても他人によってその間違い方が違うため創られたものは同一にならない。そしてある一人の料理人が同じ素材、同じ調味料で作ったとしても、同じ味や見た目の料理が出来ないように、同じ人物が創ったとしてもその時と同じものは二度とできない。


2.人間の脳は再生と上書きの繰り返しという機能をもったアナログな機関である。過去の経験を再生し、現在を記憶していく。また再生するたびに上書きをしながら保存してしまう。使わずにしまっておいた記憶は劣化してしまう。久しぶりに引っ張り出してきた記憶はノイズがチリチリと混じりながら再生される。そして記憶自体はいろいろな時系列や感情、においなどのタグが張ってあり複雑な系列により他の記憶と結ばれていて、ひとつの記憶を取り出すときにほかの記憶も芋づる式についてきてしまう


3.絵画とはここにありながらもそこを体験する装置である。いま実在しないものを記憶するためという絵画の根源。そこに芸術のあり方を考える。記憶し再生するための装置。それが絵画だ。


それでは、今回の一曲。
Philadelphia Grand Jury - The Good News