小沢健二「ひふみよ」ツアー@中京大学オーロラホール 詠

歌い終わると拍手がおこり、特徴的なあのギターリフが流れて「痛快ウキウキ通り」へ。歌い始めを「プラダの靴がオー」と会場にいる殆どの人達が歌っていて、「やっぱり、みんな知ってるね!」とすごく嬉しくなった。好きなものを共通な価値観で認識しあえるというのはすごく閉鎖的であるかもしれないけど嬉しい。それにしてもバックに流れる映像が可笑しかった。電飾で飾られた仏像の山車がエレクトロ・パレードみたいに練り歩いていてる。シュールすぎて面白い。そして次の曲は「天気読み」。いろいろな事が起こる世界だけど一日の最後には、君に電話をかけて眠りたいと歌われるこの曲は、初期の小沢らしいフレーズ満載で青臭さやもどかしさが伝わってくる。「やっぱり、いい曲だな」と改めて思った。演奏が終わるとバスドラムが打ち続けて(Perfumeファンの僕はPTAみたいと思ってしまった)「暗闇の中挑戦は続く 勝つと信じたいだから」と歌いだし「戦場のボーイズ・ライフ(ボーイズ・ライフPt2:愛はメッセージ)」〜「強い気持ち強い愛〜Metropolitan Love Affair〜」へ!アッパーチューンが続いて、僕はすっかり踊れない。。なぜなら席に座ったままだから!筒美京平ソングブックと名付けられた「強い気持ち強い愛〜Metropolitan Love Affair〜」が発売した頃に筒美京平がインタービューで「小沢君は郷ひろみと似ている。声を聞いてこれ以上高い音は苦しいかなって感じるけど、いざ歌ってみるとどんどん高い音が出てくる」なんて話してたことを思い出す。
「がんばれカローラ2。次の曲も歌って欲しいところがあるのでそこが来たら思いっきり歌っていただけたら」の言葉と共に「今夜はブギーバックへ」のイントロが流れ出して大歓声があがる。「ラップ部分はどうするだろう?」って思っていたら、観客全員で歌うことに。やはり黄色い声が多い。演奏が終わると大きな拍手と完成が一際大きく上がった。
そして「手をひらひらダンス」と共に朗読が始まる。


「日本に帰るときに言葉や行動の変化に気がつく。そして変わらないものも沢山あることにも気づく。その両方に気がつくことはとても楽しくて意味がある事だと思う。最近の日本は安全が大事らしく安全商品で満ちている。湯沸しからお湯を入れる時、ロックをはずさないとお湯が注げないようになってたりする。街でも安全のためにいろんなことが禁止になる。こんな安全な国をもっと究極に安全にしようとしているらしい。けれどそんなに究極な安全を求めたら、むしろ危険なものになってしまうんじゃ無いだろうか?建築会社に勤める友人から「安全ボケ」ということを聞く。「安全ボケ」というのは身の回りに安全対策が増えすぎて、人が周りに注意を払わなくなってしまい危険を察知する能力が消えてしまうらしく、こんなことになったらすごく危ない気がする。さて何でも安全のためにと禁止になるこの島国では全然安全じゃない風景がある。普段は安全を心配するこの国の人たちは、自転車に乗った途端どうでも良くなってしまうらしい。歩道を歩く僕の横を自転車に乗ったおばさんがすり抜けていき、一方通行を何台も逆走をしてくる。そして夜になれば街中で自転車の酔っ払い運転が始まる。法でなんでも規制されるアメリカでは今あげたことは全部禁止。けれど日本ではやりたい放題。自転車に乗った瞬間に欧米型に教育された日本人の心の中で、「えーい、どうにでもなれ。生きることは危険と背中合わせ。神様仏様の言うとおり」というベトナムや中国のようなアジアの魂が出現するらしい。
それはヒンズゥー教っぽいというか仏教っぽいというかシルクロードっぽい魂のようにみえる。どこかで皆が「あぁ、死んでもいいよね〜」と思っている気がする。キリスト教とかユダヤ教の友人が持っている死を恐れる感覚とは全然違う気がする。「あぁ、夢が夢ならかまわない」ってか。
アメリカにいると人間こそが万物の支配者という感覚が満ちていることを感じる。けれど日本にいるとそういう尊大な感じはあまり感じない。「アマゾンの奥地に歩く木がある」と言うとアメリカの友人たちは科学的に説明しようとするけれど、日本の友人達は「あぁ、木は歩くかもねぇ〜」と言う。欧米文化を貫く人間が地上の支配者という感覚は世界では少数派で、虫も木も動物もそれぞれの魂を持っているという考え方のほうが圧倒的に多数派な気がする。学校では教えてくれないけれど。」
朗読の内容に呼応するように、ピアノで「夢が夢なら」のメロディが演奏され花火の映像が流れ出す。そして小沢健二が穏やかな声で四季の情景を歌いだす。そしてアルバム「Eclectic」から唯一演奏された曲「麝香」へ。麝香とはジャコウジカから得られる分泌物を乾燥した香料のこと。香りが夜を飾る頃に演じられる大人の恋愛(不倫?)を描写された曲に、発売当初は違和感を覚えたけどもうそれは感じなかった。