小沢健二「ひふみよ」ツアー@中京大学オーロラホール 急

「ラブリー」の練習が終わったあと、朗読をしたときと同じドラムがタムを刻む音楽が演奏されステージ上でオザケンとバックメンバーが、両手を交互に上げ手のひらをひらひらと回転させるように踊りだす。可愛らしいダンスが少しの間続くと、オザケンが「やろうかどうか悩んでる方もどうぞ。」と話し笑いと共に会場全体が一緒に踊りだす。「これ13拍子でやっているので、てがこう逆になるんです。」なんて説明が終わったあと、朗読が始まる。
「NYのお金持ちの友人は、スニーカーを二度はいたら捨ててしまう。何度も同じスニーカーをはいてる人を可哀想だと思う。ファーストクラスに乗れない貧乏人は、エコノミークラスにギュウギュウに詰め込まれて「あんなので旅行するなんて楽しいわけが無い」と思っている。しかしエコノミークラスの人間は、「100万もするファーストクラスに乗っても着く場所は同じなのに、馬鹿じゃないの?」と思っている。
いわゆる貧しい国の写真を日本の人に見せると「車がサビだらけ」とか「靴に穴が開いてる」等と言って、「買い換えるお金も無いんだ。可哀想」なんて思ったりする。けれど、それはNYにいる大金持ちの友人と変らない。
人が持っているものが新しいとか古い、高いとか安いなんてことで人の幸せは決まらない。
街の車がどんなに古くても、自転車やバス、船も移動には音楽がつきものだ
世界中の街で、その土地の大衆音楽が流れている。歌われていることは、悲しい気持ちとかこの世界にいる喜びとか、恋人のこととかリズムやメロディが違っていても大体かわらない。僕らはたいして違わない。世界中の街で、その街の大衆音楽が愛されて歌われている。
コンサートホールいっぱいの人の前で歌が歌われる。この街の大衆音楽の一部であることを誇りに思います。ありがとう」


こういった表現で歌い手のことを話すオザケンの王子様なんて言われていたあの頃の喧騒へのすっきりとした思いに触れ、少しだけ時を感じた。
朗読が終わると、異国の街を走る車の映像と共にインド民謡のような音楽が流れ「新曲か?」と思っていると「カローラ2にのって」を歌いだされた。オザケンの中でセールスとして一番売れたシングルがこの曲。題名どおりに「カローラ2」の初代CMソング(2代目はカジヒデキ)に使われ、「乗れて音楽が聴ければいい。燃費がよければもっといい」という車への価値観を持っている僕が、後日カローラ2に買うことになった理由の曲でもある。一番売れて一般的にも代名詞ともなったこの曲は、皮肉なことに作詞・作曲は小沢健二ではない。そんな曲を決してポップとは言えない編曲に合わせて「今度 君のカローラ2で 遠い街まで行こう 行こう 行こう」と繰り返すよう歌っていた。